アルマイト、クロメート処理、黒色塗装、ブラスト、無電解ニッケルを比較。放熱性能、耐食性、コスト、納期の違いを一覧で示します。
ヒートシンクの表面処理:種類とコスト影響
結論から言うと:アルミヒートシンクでは、クリアまたは黒のアルマイト処理が標準的で、部品コストを概ね 5-15% 押し上げます。黒アルマイトは放射率をわずかに上げ、自然対流では意味がありますが、強制空冷ではほぼ効果がありません。クロメート化成処理は安価ですが耐久性が劣ります。素地のままで切削したアルミは界面性能が最も良い一方、防食はありません。粉体塗装は断熱層になるため、ヒートシンクでは原則避けます。
表面処理は「見た目」の項目だと思われがちですが、実際には熱抵抗、耐食寿命、そして単価の3つに同時に効きます。処理を決める前に、その面が熱の通り道なのか、外観なのかを切り分けてください。
表面処理の比較
| 処理 | コスト影響 | 追加納期 | 熱への影響 | 適する用途 |
|---|---|---|---|---|
| 素地・切削のみ | 基準 | 0 | 接触性能が最良。放射率は約 0.05 | グリス界面、ポッティング組立、コスト重視の部品 |
| クリアアルマイト 10 μm | +5-10% | 3-5日 | 放射率は約 0.8。伝導への影響は無視できる | 一般電子機器、屋内、ほとんどのヒートシンク |
| 黒アルマイト 15-25 μm | +8-15% | 4-7日 | 放射率は約 0.85-0.90。自然対流でわずかに有利 | 自然対流、屋外、外観製品、LED |
| 硬質アルマイト(Type III) | +20-35% | 7-10日 | 膜が厚く、接触面に施すと界面抵抗が増える | 耐摩耗、過酷環境。接触面はマスキングする |
| クロメート化成処理(RoHS 三価) | +3-6% | 2-3日 | 放射率は約 0.2-0.3。薄膜で影響は小さい | コスト重視の部品、EMI筐体、塗装の下地 |
| ビーズブラスト・サンドブラスト | +3-8% | 2-4日 | 表面を粗し、放射をわずかに改善できる | アルマイト前処理、外観の均一化 |
| 粉体塗装 | +8-15% | 5-8日 | 60-100 μm の断熱層。性能を明確に悪化させる | ヒートシンクが化粧カバーを兼ねる場合のみ |
| 無電解ニッケル | +20-40% | 7-12日 | ニッケルはアルミより熱伝導率が低い。薄膜に限る | はんだ付け性、耐摩耗、特定の耐薬品性 |
黒アルマイトは過剰仕様になりやすい
黒アルマイトが効くのは、放射が熱移動の主要経路になる場合です。自然対流で、周囲に高温の壁がなく、表面がよく見える設置条件では、放射率 0.85-0.90 が効きます。一方、ファンで強制空冷する筐体の内部では、熱の大半は空気の流れが運びます。この条件で黒にするのは、外観要求か、指紋や汚れの目立ちにくさを買っていることになります。仕様を決める前に、冷却方式を確認してください。
接触面の問題
もっとも多い失敗は、接触面にもアルマイトをかけてしまうことです。アルマイト膜は酸化アルミニウムで、熱伝導率は素地より1桁低くなります。10-25 μm の膜でも、界面抵抗としては無視できません。対策は単純で、接触面をマスキングして処理後に素地を出すか、処理後に切削で膜を除去します。図面には「接触面はマスキング、アルマイト不可」と明記してください。硬質アルマイトでは特に重要です。
腐食から何を守るのか
屋内の電子機器では、腐食の主因は結露と異種金属の接触です。アルミ同士なら問題は小さく、アルミと鋼や銅が電解質を介して接すると、アルミ側が優先的に腐食します。屋外では塩分と紫外線が加わります。この場合、膜厚 15-25 μm の黒アルマイトが実用的な選択です。安価なクロメートは輸送中の一時防食には向きますが、長期の屋外暴露には不足します。
図面での指定方法
指定は3点で足ります。処理の種類と規格、膜厚の範囲、そしてマスキング範囲です。色は「黒」ではなく、Lab値や見本番号で指定すると色差トラブルが減ります。ロット間の色差を許容する範囲も併記してください。レーザーマーキングを行う場合は、処理の前後どちらに行うかで見え方が変わります。アルマイト後のマーキングは白っぽく抜け、前に行うと黒く沈みます。
よくある質問
黒アルマイトにすると放熱性能は上がりますか?
自然対流では放射率が約 0.85-0.90 になり、わずかに有利です。強制空冷ではほぼ差が出ません。冷却方式で判断してください。
接触面のアルマイトを避けるには?
マスキングを指示し、処理後に膜厚を測定します。図面に「接触面はアルマイト不可」と明記することが最も確実です。
粉体塗装はなぜ避けるべきですか?
60-100 μm の樹脂層が断熱材として働き、熱抵抗を明確に悪化させるためです。外観カバーを兼ねる場合以外は勧めません。
処理の追加納期はどのくらいですか?
クリアで 3-5日、黒で 4-7日、硬質で 7-10日が目安です。繁忙期はこれに待ち行列が加わります。
使用環境、冷却方式、接触面の有無をお送りください。熱性能と耐食性の両面から、処理の種類と膜厚を提案します。


