押出しのまま出せる公差、機械加工が必要になる条件、平面度が熱抵抗に与える影響、接触面の指定方法を数値で説明します。
ヒートシンクの公差と平面度:図面の指定方法
結論から言うと:押出しのままのヒートシンク形材は、フィン厚で +/-0.15 mm、全体寸法で +/-0.3 mm が標準です。これより厳しくしたい場合、またはベース平面度を 0.1 mm より良くしたい場合は、押出し後に機械加工が必要になります。機械加工品の標準公差は重要部位で +/-0.05 mm、ベース平面度は 0.05 mm、費用を上げれば 0.02 mm まで対応できます。
公差は「厳しければ良い」ものではありません。製造できない指示は、見積段階で無視されるか、過剰な検査費として跳ね返ります。重要なのは、どの寸法が熱性能に効き、どの寸法が組立に効くのかを分けて指定することです。
各工法が実際に出せる公差
| 部位 | 押出しのまま | 押出し後の機械加工 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 全体の幅・高さ | +/-0.3 mm | +/-0.05 mm | 金型の摩耗により寸法はプラス方向に成長する |
| フィン厚 | +/-0.15 mm | 該当なし | フィンは金型で成形され、スカイビング以外は切削しない |
| フィンピッチ | +/-0.10 mm | 該当なし | 幅の広い断面では誤差が累積する |
| 切断長さ | +/-0.5 mm | +/-0.1 mm | のこ切断かエンドミル仕上げかの違い |
| ベース平面度 | 通常 0.15-0.30 mm | 標準 0.05 mm、達成可能 0.02 mm | ヒートシンクで最もコストに影響する指示 |
| ベース厚 | +/-0.25 mm | +/-0.05 mm | 厚さの変動は拡散抵抗に直接影響する |
| 穴位置 | 該当なし | +/-0.05 mm | 押出し後にドリルまたはエンドミルで加工 |
| ベースとフィンの直角度 | 通常 0.3 mm | 0.05 mm | 筐体壁に押し当てて固定する場合に効く |
| 接触面の表面粗さ | 通常 Ra 3.2 | 標準 Ra 1.6、要望により Ra 0.8 | 粗さは熱界面の性能に影響する |
ベース平面度が他のどの寸法より重要な理由
熱はベースと相手面の実接触点だけを通ります。平面度が悪いと、見かけ上の接触面積は大きくても、実際に接している面積は数分の一になります。その隙間は空気で埋まり、空気の熱伝導率はアルミの数千分の一です。結果として、フィンを厚くしても、ベースを厚くしても、熱抵抗は下がりません。平面度は寸法精度の問題ではなく、熱設計の問題です。
正しく製造される指示の書き方
平面度は必ず基準面を明示して指示します。図面上に「平面度 0.05」とだけ書くと、どの面のどこを測るのかが曖昧になります。接触面全体に対して定義し、測定範囲と測定点の数を併記します。加えて、フィン先端の許容、ベース厚の許容、そして基準となる面の指定を行います。GD&Tを使う場合は、平面度だけでなく、必要に応じて平行度と直角度も併記すると、検査での解釈のぶれが減ります。
公差を厳しくするコスト
公差を1段階厳しくすると、加工工程が増えます。押出しのまま +/-0.3 mm で出せる部品に +/-0.05 mm を要求すれば、ベースと側面の切削、治具の追加、CMMによる全数または抜き取り検査が必要になります。費用は加工費に乗り、納期は段取り分だけ延びます。本当に必要なのは、熱界面の面と、嵌合する1-2箇所だけであることがほとんどです。
押出し公差がドリフトする理由と対策
押出し金型は使うほどベアリング部が摩耗し、形材は徐々に大きくなります。新品の金型で中央値だった寸法が、3-8トンを押し出した頃には上限に張り付きます。対策は3つです。金型ごとの累積押出し量を記録する。ロットごとにフィン厚とベース厚を測定する。そして、寸法が上限に近づいた時点で金型を修正する。この3つを運用している工場は、長期の量産で寸法が安定します。
よくある質問
平面度 0.05 mm は押出しのままで出せますか?
出せません。押出しのままでは通常 0.15-0.30 mm です。0.05 mm は押出し後のベース切削で達成する水準です。
接触面に熱グリスを使う場合、平面度は緩くできますか?
膜厚 0.05 mm の薄いグリスでは、隙間の変動を吸収できません。この場合は 0.05 mm を維持してください。0.5-1.0 mm のギャップパッドを使うなら 0.10-0.15 mm で足ります。
フィン厚の公差を厳しくできますか?
押出しでは +/-0.15 mm が標準で、機械加工の対象外です。厳しくしたい場合はスカイビングなど別工法の検討が必要になります。
公差を指定しなかった場合、どうなりますか?
一般公差が適用され、平面度は保証されません。熱性能が問題になった時点で、図面の問題として扱われます。
接触面の平面度、使用する熱界面材、固定方法をお送りください。必要な公差水準と、押出しのままで足りるかを判断して提案します。


